土嚢とは?土嚢の正しい使い方と意外な注意点まとめ
台風や大雨による水害や土砂災害は毎年のように発生しており、さらに近年ではゲリラ豪雨も頻発し、これまで浸水被害を受けたことのない地域においても対策の重要性が高まっています。
浸水対策として広く知られているのが、土嚢による止水です。たしかに土嚢は有効な止水手段のひとつですが、実は一方であまり知られていない注意点もあります。
土嚢の正しい使い方と、意外と知られていない注意点をまとめました。
【目次】
土嚢とは?
土嚢とは、麻や化学繊維から作られた袋の中に土や砂を詰めて、一時的な遮蔽物を作り出す資材のことです。一般的には水害発生時における浸水対策、工事現場における土砂の遮蔽、仮設テントなどを安定させる重りなどとしてよく用いられます。
土嚢の理想的な中身とは
土嚢の中身は「土と砂である」と前述しましたが、止水目的に用いる場合の理想的な中身は砂のみです。土は粒子が細かく土嚢袋の目から流れ出てしまうことがあるため、砂のほうが止水効果が高いといわれています。
災害時に住居の庭の土を用いたり、工事現場で現地発生土を用いる場合は注意が必要で、粒子が細かすぎたり粗すぎたりして止水効果が不十分であったり、石やガレキによって袋が破けたりする恐れがあります。
中に詰める砂の量は、袋の5~6割程度が理想的です。後述の「使い方」にて詳しく説明しますが、土嚢は複数を積み重ねて用いるものであり、その際に形を変えて相互に隙間を埋める必要があります。袋いっぱいに詰めてしまうと土嚢の形を整えることが難しいため、柔軟性を保つために余裕をもって中身を詰めます。また詰めた後に持ち運ぶことも多いため、重さもコントロールしなければなりません。
土嚢の重さ
一般的な土嚢1袋あたりの重さは、上述の5~6割程度に砂を詰めたもので約20kg~30kgもあります。たとえば高さ20cm×横幅1mの土嚢壁をつくる場合に必要な土嚢袋に数は約10袋であり、このときの総重量は約200~300kgにもなります。
特に非常時の止水手段として用いるケースでは、20kgもの土砂を詰めていくつも運ぶという動作にかかる労力や時間を十分に想定して準備する必要があります。
土嚢はどこで入手できるのか
土嚢は、土嚢袋とその中に詰める土砂を別々に手配して保管することが一般的です。いずれもホームセンターなどで簡単に手に入れることができる他、自治体によっては無償で提供してくれるところもありますので、お住まいの自治体ホームページをチェックしてみましょう。
一般的な土嚢袋の大きさは40~50cm×60~70cmで大きさで迷うことはありません。使いやすさの観点では、重さ20~30kgの目安となる線が入ったものをおすすめします。
砂は「川砂」や「真砂土」と呼ばれる種類のものが適しており、園芸用品や土木用品の売り場で見つけることができます。
正しい土嚢の使い方とは
土嚢の使い方はシンプルですが、正しく用いるかどうかで止水効果に大きな差が生まれます。ステップごとに正しい使い方を説明します。
1.土嚢の中身を詰める
土嚢袋と砂を用意したら、上述のとおり5~6割程度を目安に中身を詰めていきます。袋の口を開けながら詰める作業は1人では難しいため、2人がかりで行います。1人が袋を持って固定し、もう1人がスコップなどで土砂を詰めましょう。1人で作業する場合は、詰めやすいように専用の袋スタンドなどもありますので準備を検討しましょう。
2.土嚢袋の口を縛る
(出典:国土交通省四国地方整備局「水防工法pocket book」)
中身を詰めたら、土嚢袋の口をしっかりと縛ります。袋の端から出ている紐を引っ張って口を絞り、2~3回巻きつけてから止め結びで縛ります。
3.土嚢袋を積む
土嚢は2段、3段と積み重ねることによって隙間が埋まって止水効果を発揮します。
まず1段目を並べます。このとき長辺が外を向く「長手積み」で並べましょう。また袋の口は水の流れの下流に向け、隣の袋が前の袋の口を隠すように重ねて中身の流出や水の抵抗を減らします。
2段目以降は、下の段の隙間に重ねるように半分ずつずらし、互い違いに積み上げます。隣の土嚢や上下の土嚢と少しでも隙間があると浸水する原因になりますので、うまく形を調整しながら隙間なく積み上げましょう。このとき、土嚢袋の結び目は1段目と同じく水の流れがない側に向けて、内側に折りたたむように置きます。
位置を決めた土嚢はひとつひとつ、しっかりと足で踏み固めて成形と強度をアップさせます。
土嚢の注意点とは
土嚢は正しい方法で用いれば浸水対策の手段として十分な活躍をしてくれます。一方で、次のような点に注意が必要です。非常時に想定外の事態に陥らないよう、正しく認識しておきましょう。
人手と時間が必要
高さ約40cm × 横幅2mの土嚢壁をつくるためには、大人2名が取り組んでも平均して約100分ほどかかるといわれています。しかも正しく隙間なく積み上げなければ、せっかく作り上げた土嚢壁からも浸水する恐れがあります。一刻を争う非常時の中で、100分の時間や十分な人手が確保できるのかどうか、あらかじめ想定しておかなければなりません。
大量の土砂が必要で、常備も難しい
土嚢袋に詰める大量の土砂が必要となります。上述のとおり十分な効果を発揮させるためには特定の適切な土砂を用意しておくことが求められます。特に一般家庭や小型の店舗・施設において数百kgもの土砂を常備しておくことは容易ではありません。
一定の技術と経験が求められる

土嚢はしっかりと固めて隙間なく積み上げることで初めて浸水対策として十分な効果を発揮します。積み上げる技術以外にも、どの方向から水が流れてくるのか、どれぐらいの高さの土嚢壁が必要なのかなど考慮すべき点がいくつもあり、わずかな不備が浸水につながる恐れんがあります。緊張状態の中で経験の乏しい人が正確な対応や判断をすることは難しいといえるため、浸水対策として土嚢を検討している場合は学習や練習も視野に入れて準備するべきです。
袋の耐久性が低く、再利用が難しい上に後処理が大変
土嚢袋はポリエチレンなどの化学繊維からつくられています。 一般的には使い捨てのものが多く、水害時に一度使用したものは使い捨てなくてはなりません。数百kgもの土砂を処分するには、また大きな手間や費用がかかります。これも考慮しておくべきでしょう。
土嚢以外の水防策を検討する
相次ぐ水害を受けて、土嚢に代わる止水資材も登場して注目を集めています。
水を含むと膨らむ特殊な材料を用いたものや、土の代わりに水を詰める水嚢、さらにはパネル状の膜壁を並べるだけの便利なものまで様々です。
「土嚢は思っていたより大変そうだな」と感じた方は、他の手段も検討することをおすすめします。
土嚢に代わる浸水対策ツール「デルタパネル」
土嚢の課題である常備の難しさや設置の難しさをすべて克服した浸水対策ツールがあります。それが、「デルタパネル」です。
「デルタパネル」はシート状の膜素材にアルミフレーム・パイプ・メッシュシートで構成される安定構造の三角の断面を形成し、簡単に止水壁をつくれる画期的なツールです。特許出願済みの独自仕様により、軽量でコンパクトながらしっかりと水圧に対抗できる強度を生み出します。
デルタパネルは以下のような優れた特徴を持っています。
- たった一人で、わずか10分間で設置可能
- コンパクトな作りで軽量のため、保管も容易
- 高い止水効果と耐久性
- 何度でも再利用が可能で、経済的にも優しい
たった一人で、わずか10分間で設置可能
デルタパネルの設置には他の資材や工具は一切不要で、シートを立ち上げたらパイプを挿入するだけで設置作業は完了します。きわめて簡単な作業であり、未経験でも設置にかかる時間はわずか10分間程度です。緊急時にも早急な対応を実現します。
コンパクトな作りで軽量のため、保管も容易
デルタパネル1枚あたりのサイズは高さ60㎝×幅110㎝からで、重量はわずか2.5kgです。シート部分は丸めて折りたためるため、一般家庭や小型の店舗での常備においてもスペースの心配は不要です。数百kgにもおよぶ砂などの中詰め材も必要ありません。
高い止水効果と耐久性
デルタパネルは土嚢と違って隙間がないので、土嚢のおよそ1/40程度の漏水量という高い止水効果を発揮します。合成樹脂からできた膜素材は接続面を溶着技術によってつないでおり、パネルごとの連結箇所も二重の止水ファスナーでつなぐ仕様であるため、隙間からの水漏れの心配もありません。
またデルタパネルは接地面にも膜素材を使っているため、凹凸のある地面であっても柔軟にとフィットし、あらゆる面に密着させて浸水を防ぎます。
これだけの止水性能を誇りながら強度も高く、一般的なテントに用いられるシートの5倍以上の引き裂き強度があります。これは70kg~80kgの力に耐えられることを意味します。
何度でも再利用が可能で、経済的にも優しい
土嚢は一度使用した後は摩耗しているために処分しなければなりませんが、デルタパネルは、繰り返し使用可能です。
乾かして解体すれば再度保管できますので、再利用できて経済的にも環境的にもやさしい仕様です。
まとめ
土嚢の正しい使い方注意点を整理しました。
たしかに有効な止水手段ではありますが、いざというときに十分な効果を引き出すためには正しい理解と練習が必要です。「デルタパネル」のような代替商品もありますので、自身の環境に最適な対策を検討してください。